Research

研究テーマ紹介

Liquid Transport Inspired by Wharf Roaches

“フナムシ”はゴキブリ(Roach)の仲間?それともダンゴムシ? 日本でも海外でも“ムシ”のイメージが強いですが、実はエビやカニの仲間でエラ呼吸を行う生物です。しかし、陸上生物で泳げないという特徴があります。そのために“フナムシ”の脚には海水をエラまで輸送するための仕組みがあり、海水はポンプを使うこと無くエラまで自発的に運ばれていきます。この現象は、服に液体が染み込んでいく現象と同じものです。“フナムシ”の脚にはマイクロサイズの突起が無数にあり、その突起群に海水が染み込んでいきます。その突起構造を模倣した液体輸送デバイスを作製し、例えば、水と油を分離したり、液体輸送の速度を制御したり、デバイスの簡単な作製方法を模索したりしています。

リンク : http://www.ostec-tec.info/01-2/uploads/photos/83.pdf


NanoSuit® Inspired by Maggot Worms

生体模倣材料を生み出していくには、まず生物のマイクロ・ナノ構造を観察する必要があります。人の目には見えない小さな構造を観察するには、電子顕微鏡を使います。電子を飛ばして跳ね返ってきた電子を捉えることで像を得ることが出来ます。しかし、電子を飛ばすには宇宙空間のような真空条件が必要となってきます。そのような条件では、生きた生物は“干からびて”しまうので、一般的には脱水などの処理を施して電子顕微鏡で観察します。下処理は観察物によっては多段階で複雑になり、生物の構造を破壊してしまう場合もあります。
なんとか簡便に観察できないか・・・そんな時に登場したのがショウジョウバエの幼虫(蛆)です。やつらはなんと真空中でも生きていられるのです!そこからヒントを得て生み出されたのがNanoSuit®です。NanoSuit®により生物を生きたまま電子顕微鏡で観察できるようになりました。当研究室ではNanoSuit®を産業に応用していくために工学的な観点から研究を行っています。

リンク:https://shingi.jst.go.jp/past_abst/abst/p/15/cips/cips06.pdf


Water Transport Inspired by Xylem Structures

 

木はどうやって水を吸い上げている? 葉から水が蒸散していくことで負圧になるから、という回答が多いですがこれだけでは説明できないことが多いと言われています。その他にも様々な仮説があります。当研究室では、木の導管構造の毛管現象に注目し、導管の模倣構造の作製方法や模倣構造の液体輸送能について調査しています。

 

 

 


Liquid Movement on the Hair Cuticles and Inspired Materials

 

生物の一本の毛は一番外側をキューティクル、中間部をコルテックス、中心部をメデュラといった三層構造で形成されています。三層の中で一番外側のキューティクルはケラチンタンパクが主成分で、キューティクル同士はCMC(細胞膜複合体)で毛根から毛先に向かって5~6枚ずつ重なり、髪の内部組織を守る働きをしています。各層の表面には、キューティクルを保護する脂質成分MEA(18-メチルエイコサン酸)が存在し、毛のツヤ感を左右しています。当研究室では、様々なキューティクル構造の動的濡れ特性の評価を行ったり、物理化学的パラメータの変化による性質変化について調査しています。